食の信頼向上への取り組み

食の安全性、信頼性の確保は、外食産業の重要な柱の一つ。
食中毒の防止はもちろん、食品表示などをめぐるコンプライアンスの問題も、
店舗や企業のブランド価値を左右する重要事です。
JFでは、会員各社へ向けた情報提供や啓蒙活動、そして社会への提言を積極的に行っています。

O-157食中毒防止対策

腸管出血性大腸菌O-157は、
その感染力の強さや生命に関わる毒性については、もちろん充分な警戒が必要ですが、
その反面、適正な対応をすれば安全性が確保できることも事実です。
JFでは、食材の仕入れから調理、提供にいたる各工程を網羅したO-157発生防止のガイドラインを作成し、会員各社の安全の質向上に貢献しています。

O-157食中毒発生防止のための当協会ガイドライン(概要)

O-157食中毒発生防止のための当協会ガイドライン(概要)

詳しくは、JFマンスリー2009年12月号へPDF

セミナー・専門講座等の開催

食の信頼向上への取り組みのひとつとして、以下のようなセミナーも開催しています。

サニタリーマネジメント プロフェッショナル養成講座

外食店舗の食品衛生実務者の養成を目的に、毎年開講。会員各社および関連団体から講師を招いて講義、ケーススタディを行うほか、実習やグループ討議、ロールプレイング、確認テストなどの多面的なプログラムによって、衛生管理のプロとしての知識や技術、心得などを学びます。

  • 2009年の講座の様子
  • 2009年の講座の様子

食中毒防止セミナー

食中毒事故のリスクが高まる梅雨期を中心に、毎年開講。食中毒予防への意識を高め、衛生管理の歴史から現状認識、また店舗における具体的な管理のノウハウ(整理・整頓・清掃・清潔・躾の「5S」など)を実践的に学びます。

食品表示とコンプライアンス

食の信頼維持のためには、ルールや法律に対する理解も不可欠です。農林水産省「食品表示110番」に寄せられる相談件数は増加し、
当協会会員企業が調査や処分の対象になるケースも増えています。コンプライアンスの問題に関して、私たちはどのように対応すべき
なのでしょうか。監督官庁である農林水産省のお二人にお話をうかがいました。

農林水産省総合食料局外食産業室長 青山豊久氏

コンプライアンスとは「法令遵守」と訳されていますが、法令を守るだけで済まされるわけではありません。問題発生時の情報公開
のあり方も、問題解決への道筋や、その後の企業イメージに大きな影響を及ぼすと考えられます。
近年、食品表示の改ざんが問題になりましたが、外食産業は食品メーカーや流通業と異なり、JAS法などによる「消費期限」「賞味期限」
といった表示がありません。しかし企業側がそのことを充分認識していない場合もあり、自社基準による食材の使用期限を「消費期限」
と混同して公表した例もあります。公表する情報の内容については、消費者の誤解を招かないよう慎重を期さなければなりません。
また、問題が起きた場合、メディアは企業と行政に説明を求めるわけですが、双方の提供する情報が整合していないと、メディアや消費者
の不信を招くことがあります。記者会見などを開く際には事前に農水省の担当セクションや日本フードサービス協会と意思疎通を図ると
ともに、公開する情報を消費者の観点で見直すことが重要でしょう。
コンプライアンスの徹底に関して、農水省は(1)各業界トップへの特別要請、(2)農水省と業界によるセミナーの実施、(3)ガイドライン
策定の三本柱によって推進。さらにそのガイドラインをもとに日本フードサービス協会が自主行動計画を作成し、業界全体での取り組み
を進めています。

農林水産省消費安全局 食品表示・規格監視室長 中村啓一氏

農水省と厚労省では、消費者にわかりやすい食品表示の実現を目指し、2002年より「食品の表示に関する共同会議」を開催。近年問題となっている賞味期限、消費期限などの表示項目について見直しを進めています。
JAS法に基づく食品の品質表示基準によれば、加工食品については製造業者などに表示義務が課され、原料供給者間の取引については、従来こうした表示義務はありませんでした。しかし、2007年のミートホープ社の事案を契機に、業者間取引にも表示が義務づけられることになりました。
現状、外食のメニュー表示に関しては表示義務の適用範囲外となっていますが、だからといって情報提供の必要がないという姿勢は通用しません。
消費者重視の考え方を基本に、何らかの有用な情報を提供すべく努力する必要があります。
コンプライアンスは単なる法令遵守ではなく、法律を超えて何をなすべきかが重要。こうした認識を、各事業者や業界団体は深めていくべきでしょう。

詳しくは、JFマンスリー2008年1・2月号へPDF

BSE問題について

2001年9月、英国や欧州で猛威を振るっていたBSE(牛海綿状脳症)が日本でも発生しました。行政側の初期対応の遅れなどから「牛肉は危ない」という風評被害が広がり、外食産業の業績にも大きく影響。回復には2年近くの期間を要しました。
JFは報道当初から迅速に行動を起こし、牛肉の安全性の確立や消費回復、外食企業の経営安定へ向けて多くの取り組みを行いました。

これまでの取り組み

BSE発生から1カ月間

[会員企業へのサポート]
BSE発生当日である9月10日、各会員企業宛に第一報をFAXにて一斉送付。その後も時を移さず、お客様からの問合せ対応に関するアドバイスの実施、緊急対策セミナーの開催、「牛肉は安全です」ステッカーの配布、融資制度の告知など、多岐に渡るサポートを行いました。

  • 店頭表示用ステッカー
  • 店頭表示用ステッカー

[行政、マスコミへの働きかけ]
発生翌日、農水省および自民党議員に対して「BSE報道についての要望書」を提出するとともに、行政側からの迅速で正しい情報の開示を要請。その後も与野党の主要議員と懇談会を開くなど、事件の影響抑止へのさまざまな努力を行いました。

  • [行政、マスコミへの働きかけ]

ステーキ無料試食会を開催

同年11月に開催された「食の祭典・2001ジャパンフードサービスショー」では、国産をはじめニュージーランド、オーストラリア、アメリカの
各国産の牛肉ステーキを来場者に無料提供。現在流通している牛肉の安全性を改めてアピールしました。

  • 2001ジャパンフードサービスショーにて
  • 2001ジャパンフードサービスショーにて

BSE対策実行特別委員会を発足

2001年12月、主に牛肉メニューを取り扱う協会会員企業41社により緊急懇談会を開催。さらに翌年1月には「BSE対策実行特別委員会」を発足し、協会のとるべき行動や今後の方向性などの議論、検討を進めました。

焼肉消費拡大キャンペーン

BSE国内発生の翌年である2002年1月からは、当協会と全国焼肉協会の共催によるキャンペーンを開始。来店客に抽選で、食事券や和牛産地と温泉を巡る旅行券などをプレゼントするもので、全国の主要紙や店頭において広告宣伝を大規模に展開しました。

新メニュー開発セミナー

当協会の食材開発・農業問題委員会により、2002年1月に開催。外食店舗に対し、牛肉を使った新メニューのアイディアと調理技術の提供を行いました。

  • 新メニュー開発セミナー

学校給食への働きかけ

全国の学校給食で広がった牛肉メニュー中止の動きに対し、各地域の会員企業とともに、学校や教育関係部署への働きかけを実施。
牛肉メニューの安全性とおいしさのPRに努め、その後の消費回復に結びつけました。

債務保証事業

経済的な影響を強く受けた中堅の外食企業に対し、運転資金の融通を支援する債務保証基金が造成され、当協会が実施主体となって2002年3月から事業開始。これにより、総枠90億円の融資が可能になりました。

その他

「BSE緊急措置法」成立を求める署名運動や国民集会への参加呼びかけなど、業界を挙げて対策を講じました。

BSE全頭検査の問題

BSE対して、国が安全確保の柱としたのが「全頭検査」でした。しかしこれに対しては、実効性の見地から多くの問題が指摘されています。
当協会では専門家やメディアとの情報交換を通して議論を深め、より適切な形で食の安全を確保することを提言しています。

国際獣疫事務局(OIE)名誉顧問 小澤義博氏

日本のBSE全頭検査で使われた手法は、欧州で開発された「迅速テスト」と呼ばれ、EUではBSEの疫学的動向を把握するために、一定頭数に対して行われていました。この方法では異常プリオンの量が少ないと検出できず、若い感染牛の多くが陰性と診断されます。
その後の研究では、感染牛の20%しか検出できないこともわかっています。それを日本では「牛肉の安全対策」と位置づけたことに問題があります。
欧州の場合、食肉の安全対策は、特定危険部位の除去を主体に行われています。こうした国際基準の存在と検査の目的について、消費者の正しい理解を促す必要があるでしょう。

  • 小澤義博氏
  • 小澤義博氏

食の信頼向上をめざす会会長 唐木英明氏

2005年、政府は20カ月齢以下の牛に対するBSE検査は不要と決定。にも関わらず、その後3年にわたってBSE検査の国庫補助を続け、その期限が切れた後も各地の自治体は独自予算で全頭検査を続けています。
「めざす会」では全都道府県知事あてにアンケートを実施し、検査を続ける理由を調査。その結果、「消費者が求めているから」が理由の第1位を占め、「他の自治体と異なった判断をするのは難しい」「安全確保のため必要」などの理由も多く見られました。
しかしその一方で、市民への周知活動はほとんど行われておらず、消費者が本当に全頭検査を求めているのか疑問が残ります。自治体は積極的な説明を避け、風向きが変わるのを待っているように見受けられます。

  • 唐木英明氏
  • 唐木英明氏

詳しくは、JFマンスリー2009年5月号へPDF

食の信頼向上をめざす会について

この数年間、食の安全を脅かす出来事が次々と表面化し、消費者の食に対する不安が生まれてきています。こうした状況を打開するには、消費者、食品関連業者の立場を超えた関係者すべてが「食の安全を守る」という目的を共有し、信頼関係を構築する必要があります。そうした考えから2008 年9月に発足したのが「食の信頼向上をめざす会」。消費者、学識経験者、生産者、食品事業者、小売および外食業者の有志によって構成される非営利団体です。JFは、同会の法人会員として活動しています。

「めざす会」の活動計画

  • ・食の安全に関わる各種情報の収集と検証、及び情報の発信
  • ・すべての関係者の相互理解を深めるためのリスクコミュニケーションの実施
  • ・メディア関係者との情報交換会
  • ・食の安全に係る団体との連携
  • ・事業者の法令遵守を徹底するための勉強会の開催
  • ・生産から流通までの現場及び関連情報の積極的公開の推進
  • ・会員間の情報交換及び交流
  • 2009 食の信頼向上をめざす会 公開討論
  • 2009 食の信頼向上をめざす会 公開討論

詳しくは、JFマンスリー2008年10月号へPDF

関連リンク

農林水産省
厚生労働省

▲ページトップへ