雇用の創出と社会保障への取り組み
安定した雇用の確保は、外食産業において常に重要な課題です。
業界では、働く人のライフスタイルを踏まえた多様な雇用形態の創出により、
社会に「働く場」を提供してまいりました。
一方で、パートタイマーへの厚生年金適用拡大など働く人の生活圧迫につながりかねない動きに対しては、実情に即した「安心して働ける業界」の確立を提言しています。
2006年末、当時の安倍内閣による「再チャレンジ支援策」として、パート労働者への厚生年金適用拡大が打ち出されました。
これは「週の所定労働時間が約20時間以上、または(労働時間に関係なく)年収が65万円以上」の労働者に厚生年金への適用を拡大するというもので、パート労働者への老後保障を手厚くし、正社員との格差是正を図ることを目的としたもの。
支援策として打ち出されたものの、外食産業の雇用実態からは著しく外れたものでした。
外食産業は、従業員のうちパートタイマーが占める割合が9割以上と非常に高い業界です。厚生年金適用の拡大となれば、外食企業の人件費負担は大幅に増大、利益は圧迫され、店舗閉鎖や倒産に追い込まれる企業が一気に増加。地域雇用にも重大な影響が及ぶであろうことは明らかです。
また、一番の当事者であるパートタイマーの方々においても、「あまり当てにならない将来の年金支給よりも、現在の収入の確保に配慮してほしい」との声が多数を占めました。
こうした実情を踏まえれば、安易な適用拡大への議論は拙速と言わざるを得ず、当協会ではパート従業員に対するアンケートなどの調査結果を踏まえ、政府に対して反対意見の主張を行い、適用基準の見直しを求めました。
その結果、パート労働者の厚生年金加入は当初見込みの310万人を大きく下回る10~20万人に抑えられ、業界への影響を可能な限り抑制することができました。